マイナンバーはいらない

post by 40kara at 2018.2.18 #209
マイナンバー訴訟東京 医療情報 2008年最高裁判決

マイナンバー違憲訴訟・東京訴訟 第7回口頭弁論の報告

 マイナンバー違憲訴訟・東京訴訟の第7回口頭弁論が、2017年11月7日14時から東京地裁103号法廷で開かれました。今回は原告が「準備書面(3)」と、甲11号証から15号証を提出しました。法廷では前回、突然の裁判長交代のためできなかった弁論更新の意見陳述を原告が行いました。さらに提出した「準備書面(3)」の要旨を原告訴訟代理人が陳述しました。

弁論更新の原告意見陳述

 前回、裁判長交代1で弁論更新の意見陳述ができなかったため、原告で開業医の田辺由紀夫さんが、事業主と医師の立場から約10分間、意見陳述を行いました。 事業主の立場からは、事業者にとってマイナンバーを必要とする業務、マイナンバーによって得られる利便性などは皆無であり、経費や事務作業など過度な負担を押し付けられている実態について、「特別徴収税額通知書」へのマイナンバー記載を例に明らかにしました。
 医療情報についてはマイナンバー制度の対象外とするという法案審議段階での約束が反故にされ、紛れもない医療情報である特定健診情報と予防接種履歴が改定番号法の成立により2018年度からマイナンバー制度の対象に追加されました。さらにマイナンバーカードのICチップに搭載された「電子証明書」を利用して医療機関窓口での医療保険のオンライン資格確認を導入する動きが進んでいます。こうした動きについて田辺さんは、患者さんの医療情報を守る医師の立場から断じて容認することはできないと訴えました(詳細は、»「東京原告陳述要旨」 を参照)。

原告準備書面(3)の概要

 国は、2008年(平成20年)3月6日住基ネット最高裁判決を前提として、番号制度はその合憲とされた要件を満たしていると主張しています。
 これに対し原告は、被告の依って立っている合憲論の基準とその当てはめは、2008年最高裁判決の「基準」を、(1)事案の前提となる制度内容が根本的に異なることを無視して、(2)形式的に当てはめてようとしている点において失当である、と述べ、書証を示しながら次のように反論しました2 (法廷では原告訴訟代理人の出口弁護士が、その要旨を10分程度陳述しました)。
  • 1) 本件で問題となるマイナンバー制度は、2008年最高裁判決の対象である住基ネット制度とは根本的に異なること(「原告準備書面(3)」第1)
  • 2) 上記1)で明らかにした本マイナンバー制度の特徴点を踏まえて、2008年最高裁判決で示された考慮要素を比較するならば、むしろマイナンバー制度が合憲であるとは評価できないという結論になること(「原告準備書面(3)」第2、1・2)
  • 3) 2008年の住基ネット関連訴訟最高裁判決3 は、個人の私生活上の自由の1つとして、「何人も個人に関する情報をみだり第三者に開示又は公表されない自由」に限定して保障したものではなく、むしろ、最高裁のその他の判決を合わせ考えるならば、最高裁は、私生活上の自由の保障の一環として、「個人に関する情報をみだりに第三者に収集、保存、利用、提供されない自由」を保障していると考えるべきこと(「原告準備書面(3)」第2、3)
  • 4) 2008年最高裁判決が示す具体的危険が認められるか否かの考慮要素からするならば、本マイナンバー制度にはシステム技術上又は制度上の不備があることにより、上述した自由に対する具体的危険性が認められ、利用の差し止めが認められるべきこと(「原告準備書面(3)」第2、4・5・6)
  • 5) それらの具体的危険性のうち、地方税の特別徴収制度には、システム技術上又は制度上の不備が著しく、具体的危険性が高いこと(「原告準備書面(3)」第3)
  • 6) 2008年最高裁判決がデータマッチングを行う主体もシステムも存しないと述べていることに関連して、“ビッグデータ”が利活用される現代社会においては、コンピュータを用いたデータマッチングとプロファイリングの危険性が飛躍的に高まっていること、及び、現代的プロファイリングにおいて容易確実に個人データを名寄せする機能を有するマイナンバー(共通番号)制度の危険性が高いこと(「原告準備書面(3)」第4)

今後の進行

 次回・第8回口頭弁論は、2018年2月20日(火曜日)14時00分から東京地裁103号法廷で開かれることになりました(法廷の都合により開廷時間が当初の「11時00分」から「14時00分」に変更になりました)。
 原告が2018年2月13日までにシステムに関する主張と追加の求釈明を提出することになり、その後、2か月程度で被告が反論することになりました。 ところが次々回の反論提出時期をめぐり被告訴訟代理人が、公務員の人事異動時期を考慮して先に延ばしてほしいと、前代未聞のお願いを延々と裁判長に繰り返す一幕がありました。
 結局、裁判長は、被告の反論提出時期を次回口頭弁論から2か月半程度とし、期日間が長いので学者さんの意見書など立証準備を並行して進めるよう指示しました。

報告集会

 口頭弁論終了後、西新橋の貸会議室に移動して、報告集会が開かれました4
 会場からは、就職活動をしている学生が無権利状態にさらされているとして、囲い込みのため内定段階で企業からマイナンバーの提出を求められ、辞退をした場合に返してもらえるのか不透明で、断わると内定が取り消されるなど、個人番号の提出を強要されている事例が報告されました。「マイナンバー検定」を実施している団体の弁護士が「内定者のマイナンバーは内定が決定した時点で確実に取りましょう」と言っており、「これで一生が決まる」と思っている学生はなかなか拒否できないそうです。
 参加者からは、「マイナンバー検定」はいずれもプライベートなもので勝手に行われていること、総務省や内閣官房は「雇用関係にある人から個人番号の提出を求める」とはっきり言っており、これは明らかなルール違反であること、個人番号は本来、必要なときにその都度収集すべきてとされているにもかかわらず、「ガイドライン」が「包括的な収集」を容認するなど非常にゆるい運用が放置されていること、個別の事例について個人情報保護委員会に報告して改善を求めていく必要があることなどの意見が出されました。
Note
*1:裁判所の構成(東京地方裁判所民事26部合議2係)は、江原健志裁判長が第6回口頭弁論から男澤聡子裁判長に交代。瀬沼美貴裁判官と森智也裁判官は変更なし。
*2:東京マイナンバー違憲訴訟第7回の裁判資料ダウンロードは以下で行えます(公開されているすべての裁判資料は »こちら にリンク一覧があります)
»東京原告準備書面(3)
»東京原告証拠説明書(甲11-15)
»東京原告書証(甲11号証)
»東京原告書証(甲12号証)
»東京原告書証(甲13号証)
»東京原告書証(甲14号証)
»東京原告書証(甲15号証)
»東京原告陳述要旨
*3:各地で行われた住基ネット(差止)訴訟の「最高裁判決」の一部は、»こちら(e-GovSecプロジェクト提供) で公開されています。
*4:報告集会のビデオは、»こちら:「20171107 UPLAN マイナンバー違憲訴訟・東京訴訟第7回口頭弁論と報告集会」 をご覧ください。
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