マイナンバーはいらない

post by nishimura at 2018.4.27 #219
戸籍 マイナンバー 連携 戸籍制度研究会 最終取りまとめ

学習会「戸籍へのマイナンバー導入は何をもたらすか」記録
その1 報告 原田富弘さん
法務省戸籍制度研究会「最終取りまとめ」を読む

多数の問題を抱える「戸籍」制度と多数の問題を抱える「マイナンバー」の連携は、2019年には法案が国会に提出される予定と言われます。この方針を打ち出した法務省の「戸籍制度研究会」の報告書(最終とりまとめ)の内容を、具体的に読み解いていきます。2017年10月26日の学習会の全記録から、いらないネット原田富弘さんの報告を収録。

I マイナンバーの戸籍事務への利用拡大

司会 初めに共通番号いらないネットの原田富弘さんから、マイナンバー制度のおさらいと、この間、法務省の専門家会議で進められてきた検討の経緯、今の段階でわかっている範囲での戸籍事務へのマイナンバーの導入について、どういったことが検討されているのかについて、報告していただきます。
 そのあと、遠藤さんから、戸籍の問題についてお話しいただきます。その後、休憩をはさんで質疑応答をしたいと思いますので、よろしくお願いします。
ではまず、原田さんお願いします。原田さんの報告のレジュメが「マイナンバーの戸籍事務への利用拡大」1 、資料集は「マイナンバー制度の概要」2 です。
原田富弘 共通番号いらないネットの原田です。今日はマイナンバーの戸籍事務への利用拡大ということで、簡単に報告をしたいと思います。資料としてお手元にあるのは全部、国側の資料を抜粋した ものですので、適宜見ていただければと思います。

戸籍と住民基本台帳と在留管理制度

 最初に、そもそも戸籍とか住民票とかがいったい何なのかということがよくわからないということもあると思うので、簡単な図を作ってみました。
 マイナンバー制度のもとになっているのは住基ネットシステムですが、住基ネットというのは住民基本台帳に住民票コードを振って全国で確認できるネットワークを作るということでした。この住民基本台帳というのは、居住関係を公証するもの――誰々さんがどこに住んでいますということを公証するものであって、自治体の事務ということになっています。
 それに対して今日のテーマの戸籍制度というのは、身分関係を登録公証するものです。これは基本的に国の事務という位置づけになっています。
 住民台帳と戸籍は、戸籍の附票という形で現住所を追えるようになっているとか、お互いに連動するような形で運用されています。
 一方、外国籍の方については、入管法が変わって在留管理制度というものが作られていて、これは中長期に滞在している外国人の方を対象に、新たな管理制度として作られたものです。また、それとは別に特別永住者の方がいらっしゃるのですが、こうした外国籍の方3 は2012年までは外国人登録制度という別の制度で管理されていたのですが、住基法が改正されて、こういう方たちも住民基本台帳に登録されるということになっています。
 この在留管理制度などと住民基本台帳のあいだというのも、お互いの住所地を連動させるようになっています。非常に重層的に、住民管理をする仕組みが日本ではできあがっています。

戸籍事務へのマイナンバー制度(利用事務・情報連携事務)の拡大

 今回マイナンバー制度ということで、法務省の資料にあった図を見てください(次図)4 。ここではあまり詳しく触れるということは避けたいと思っていますが、マイナンバー制度を利用するにあたっては法律に利用事務が記載されなければいといけないということで、今回、番号法に戸籍情報の利用事務とか情報連携を加えていくことが検討されています。
 マイナンバー制度は2015年の10月に施行されましたが、その前、法律ができたときから、付則の中に、3年後に利用拡大を検討しなさいということが入っていまして、その後、閣議決定で戸籍事務をはじめとして利用拡大を検討しろということが出されていました。そして、2014年には戸籍をはじめとする5つの事務について早急に利用の拡大について検討しろということになります。これを受けて、法務省で検討を開始します。法務省にしてみれば、いわば、国から利用拡大しろと言われたので検討を始めた、という立場になるのかなと思います。
 その後、研究会で20回くらい検討がされていまして、その途中で具体的なシステムなどを検討しろということでワーキンググループが作られ、そこでは実態調査なども行われました。
 このワーキンググループの報告を踏まえて、2017年8月に研究会の「最終取りまとめ」5 がされて、具体的な法制化に向けて法制審議会に戸籍法部会6 が作られ、10月からその会議も始まります。
 予定としては、2019年の通常国会には戸籍法改正案を提出したいということです。
 この「3年後の利用拡大」の中には、戸籍と関連して、旅券ですとか外国にいらっしゃる日本人の扱いとか、いろいろな検討課題が入っています。なかでも大きなものが、戸籍への利用拡大ということになるのかな――という状況になっています。

戸籍事務へのマイナンバー制度導入で実現しようとしていること

 現状の戸籍事務について、法務省研究会の「最終取りまとめ」の中に詳しく書いていますが、そういう戸籍の書類を出させることによって、いくつかの身分的な関係を確認するということに使われているわけです。
 この戸籍事務にマイナンバーを導入しようとしている理由というのは、今のところだいたい4つくらいかなと思います。
 ひとつは、情報提供ネットワークシステムを使って戸籍情報を提供することで、今までは手続きのときに戸籍謄本を持ってきてくれということでしたが、それをしなくても済むようにしましょうということ。例えば、児童扶養手当を申告する際に、その確認をするために戸籍謄本を持ってこいということについて、このネットワークで確認すればそれはいらなくなるということ。
 もうひとつは、むしろ戸籍の事務の中で問題になると思うのですが、戸籍の届出の事務の際に、個人番号で検索したり情報連携したりするということで、業務の効率化を図りたい。
 3 つめは、今、なかなか順調にスタートしていませんが、マイナポータルの機能を拡張してワンストップサービスに死亡とかのライフイベントにも広げていくことで、マイナンバーの利便性を高めたい。
 最後に、社会保障における給付を「適正」にするために家族関係を把握していく。

 こうしたことが導入の目的になっているかなと思います。
Note

» 原田報告全文(PDF)をダウンロード

*1 » 原田報告レジュメ「マイナンバーの戸籍事務への利用拡大」

*2 » 原田報告資料集「マイナンバー制度の概要」(日本政府の公開資料からの抜粋)

*3 外国籍の方:より詳しく言うなら、「特別永住者」を含めて日本国籍は持たないが何らかの「日本に在留する資格」を持つ人。ただし「特別永住者」を外国人と認識する人は、最近ではかなり減少しているだろう。

*4 » 法務省戸籍システム検討ワーキンググループ第2回(参考資料3)

*5 » 法務省戸籍制度に関する研究会「戸籍制度に関する研究会 最終取りまとめ」、「戸籍システム検討ワーキンググループ 最終取りまとめ」

*6 » 法務省法制審議会戸籍法部会

◯構成・脚注:いらないネットWebエンジン(NT)/校正協力:TK

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