マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2018.9.14 #236
個人情報保護委員会 ヒアリング

個人情報保護委員会へのヒアリング報告 (1)
住民税特別徴収額通知漏えいへの委員会の対応は?

 住民税の特別徴収税額決定通知書は、市町村から事業者に地方税の特別徴収(給与からの天引き)額を毎年5月に通知するものです。昨年度からマイナンバーの記載が追加されたため、多くの市町村で誤送付等により漏えいが起きました。
 この通知書による漏えいの実態や個人情報保護委員会の対応などを質しましたが、具体的なことは回答を拒まれ、明らかになりませんでした。
 

(1)住民税特別徴収額通知漏えいへの委員会の対応は?

 特別徴収税額決定通知書は、市町村から事業者に地方税の特別徴収(給与からの天引き)額を通知するもので、毎年5月に送られます。昨年度から総務省は省令で通知にマイナンバーの記載を追加したため、多くの市町村で誤送付等により漏えいが起きました1
 この通知書について、市区町村から報告されている漏えいの実態や個人情報保護委員会の対応、特別徴収税額決定通知書へのマイナンバー(個人番号)の記載についての委員会の見解などを質しました2

「個別の内容はお答えできない」

 委員会の平成29年度上半期における活動実績で、この通知の誤送付等が152件あることを報告していました3 。  
 漏えいが発生した自治体は、被害拡大の防止、事実関係の調査、原因の究明、再発防止策、本人への連絡、公表などの対応と委員会への報告が求められています4

漏えいの実態は、回答されなかった

 しかし漏えいのあった市町村名や委員会の市町村への指導監督の内容などについては、「個別の内容についてはお答えできない」と繰り返されました。漏えいした人数は695名と回答されました。公表や本人への連絡などの対応について委員会に報告することになっていますが、「事案の内容等に応じて」行うことになっており判断は市町村に任せているので実態はお答えできないとの回答。さらに漏えいされた人の個人番号の変更の有無や、誤送付等された事業所数については、委員会は把握していないとの回答でした。
 本年度から書面による通知へのマイナンバーの記載は中止されました5 。しかし新潟県上越市で、電子的な通知の誤送付が報道されています6 。この本年度の特別徴収税額通知の漏えいについても、報告を受けているのは1件だが市町村名その他はお答えできないとの回答です。

なぜ実態を公表できないのか

 個別の事案について回答できない理由は、本人から公表しないでほしいと言われているところがあることや、一般的な情報セキュリティとして問題が生じていることを公表すると他から攻撃をうけるターゲットになる懸念があるからという説明でした。
 市区町村には再発防止策などの指導助言は行っているが、公表や本人への通知、個人番号の変更などについて委員会からは求めていないということです。

漏えい等は自治体から委員会にもれなく報告されているか

 また委員会への報告がきちんと行われているかについては、自治体への説明会等で周知し、新聞報道等で漏れがわかればアクションをとるようにしているので、報告漏れは少なくなっていると認識しているとの説明。広範な自治体で漏えいが起きているにもかかわらず、必ず報告するよう改めて通知するなどの対応はしていないとのことです。
 一般的に漏えい事案をすべて公表はできないにしても、今回のような自治体からの誤送付等の状況を回答できない理由にはなりません。この特別税額通知書の問題は、マイナンバー制度開始以降もっとも広範な漏えいの事案であり、今後のためにも検証が必要です。

「総務省への指導助言はできない」

漏えいの原因をつくったのは、自治体の懸念を無視して強行した総務省

 特別徴収税額通知書へのマイナンバーの記載は、総務省の強い求めにより昨年度からはじまりました。記載は自治体が望んだことではなく、東京、埼玉など多くの自治体が誤送付や郵送中の事故を心配しマイナンバーの記載を見合わせました7
 漏えい発生の原因は総務省です。しかし個人情報保護委員会は総務省への指導助言は行っていないとの回答です。

総務省への指導助言はできない仕組み!?

 総務省に指導助言していないのは、法律では指導助言は個人番号利用事務等実施者、つまり個人番号を取り扱っている者に行うことになっており、制度官庁に対して制度設計に対する指導助言を行うことは想定していない、との理由です。原因を改善できない指導助言では、意味がありません。
 指導助言ではなくても総務省に対してなにか対応したのかについても、
  • 漏えいの報告を注視してきた
  • 29年度上半期の委員会の活動実績報告で、苦情相談あっせん窓口に特別徴収税額通知書へのマイナンバー記載についての事業者や自治体からの意見が多かったことを記載しており、それは総務省にたぶん伝わっていると認識
  • 本年度から通知書にマイナンバー記載が中止されたが、委員会からアドバイスはしておらず総務省で判断したと認識
など、対応していない実態が明らかにされました。

安全管理措置について調査はしていない

 安全管理措置が未整備な事業者にマイナンバーが記載された通知が届くと、不適切な扱いがされるおそれがあります。また総務省は通知にあたり、マイナンバーの適切な管理のために送付先の部署や担当者を把握して正確な宛て先を記載するよう市町村に通知していました8
 しかし事業所の安全管理措置の実施状況や市町村での通知先の記載について調査をしているかとの質問には、総務省も個人情報保護委員会も調査は実施していないという回答でした。

苦情あっせん相談窓口に通報してもどう処理されるのか

 個人情報保護委員会は、苦情あっせん相談窓口に寄せられた情報により必要な指導助言を行っていると説明しています。しかしこの「マイナンバー苦情あっせん相談窓口」は、相手方への苦情の内容の伝達あっせん、他の相談窓口の紹介、監督部門への取次ぎなどを行うだけです9
 通報者にその後の処理の報告もされず、委員会がどのように責任をもって苦情を処理するのか、その処理基準や対応の仕方も明らかにされていません(基準がない?)。苦情処理は第三者委員会のもっとも大事な仕事ですが、市民からみるとまことにお粗末です。

「特定個人情報保護評価では人為的ミスは防げない」

漏えいが発生しても「必要な措置は講じられている」?

 「特定個人情報保護評価」は個人情報保護委員会と同様にマイナンバー制度とともに始まった制度で、マイナンバー制度の危険性を防ぐ個人情報保護措置です。評価書10には「誤った相手・情報を提供・移転してしまうリスク」の防止も記載されています。総務省は通知にあたり、市町村の特定個人情報保護評価書に基づき適切な方法で送付されると説明してきました。
 しかし多くの漏えいが発生したにもかかわらず、平成29年12月6日の委員会に報告された「マイナンバー法に基づく報告」では、評価書に対しリスク対策はおおむね必要な措置が講じられていると報告しています11

「人為的ミス」に無力な保護評価

 なぜ漏えいが起きているのに必要な措置が講じられていると判断したのかとの質問に委員会は、この報告は毎年度地方自治体に取扱状況を聞いて取りまとめる定期的な報告で、特定個人情報保護評価書の対策を行ったとしても人為的なミスをすべてなくすことは困難であり、この報告と漏えいに対する指導とは別の話だと説明しています。しかし特別徴収税額通知の漏えいは予想された漏えいであり、「人為的ミス」として済ませることはできません。
 「(3)情報提供ネットワークシステムの監視は行われているか?」の情報連携でも、また「(4)日本年金機構の不適正な再委託への対応について」の年金機構の不正再委託問題でも、特定個人情報保護評価書に反した事態が起きても対応されていません。保護評価制度が形式化・形骸化していると言われていますが、委員会の説明も保護評価制度でマイナンバー制度の危険性を防止する実効性があるのか、疑問を抱かせるものでした。

Note

» 今回のヒアリングのために個人情報保護委員会に提出した質問書

» 前回質問書への回答拒否に対する、個人情報保護委員会あて抗議声明

*1 : » 「個人番号(マイナンバー)を記載した住⺠税特別徴収税額決定通知書の誤送付・誤配達一覧」 共通番号いらないネット、2017.10.31最終更新

*2 : » 「個人情報保護委員会への質問事項」 共通番号いらないネット、2018.8

*3 : » 「平成29年度上半期における個人情報保護委員会の活動実績について」 個人情報保護委員会、2017.10.21

*4 : » 「独立行政法人等及び地方公共団体等における特定個人情報の漏えい事案等が発生した場合の対応について(平成27年特定個人情報保護委員会告示第1号)」

*5 : » 地方税法施行規則の一部を改正する省令(平成29年総務省令第83号) 第2条3項。総務省、2017.12.26
マイナンバー記載中止の経過については、後出 *7 「特別徴収税額通知(以下:特徴通知)へのマイナンバー記載を巡る、一連の動向」参照。

*6 : » 「マイナンバーなど26人分漏えい 上越市では2015年の法施行後初」 上越タウンジャーナル、2018.5.29

*7 : » 「特別徴収税額通知(以下:特徴通知)へのマイナンバー記載を巡る、一連の動向」 共通番号いらないネット、2018.1.16
また、関連するいくつかの資料が、 » 「住民税の特別徴収税額通知書への個人番号不記載に関する 記者会見&院内集会」 共通番号いらないネット、2018.1.7 所収の配布資料・資料集に収録されている

*8 : » 「平成29年度分以降の個人住民税に係る特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)の送付に関する留意事項について(通知)」 総務省自治税務局市町村税課、2017.3.2

*9 : » 個人情報保護委員会 マイナンバー苦情あっせん相談窓口

*10 : »「特定個人情報保護評価指針」 特定個人情報保護委員会、2014.4.20

*11 : » 第49回 個人情報保護委員会 2017.12.6 所収の、資料1-1 »「マイナンバー法に基づく報告結果について」

photo素材:ぱくたそ ©axis

◯学習会2 「戸籍情報の連携とマイナンバー制度導入の危険性」2018.7.12の記録を準備中:11月を予定
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