マイナンバーはいらない

post by m-toshi at 2019.4.24 #249
戸籍法 戸籍事務に利用拡大 一元管理 差別データ 相続 情報連携

戸籍法改悪法案に反対する声明

 2019年3月15日、政府はマイナンバー制度を戸籍事務に拡大する戸籍法改悪法案を国会に上程しました。この法案は国家による全国の戸籍・除籍データの一元管理を実現するものであり、断じて認めるわけにはいきません。共通番号いらないネットは4月12日に戸籍法改悪法案に反対する声明を発表しました。

戸籍法改悪法案に反対する声明

 2019年3月15日、政府は、マイナンバー制度を戸籍事務に利用拡大する戸籍法改悪法案を国会に上程した。番号制度の情報提供ネットワークシステムによる情報連携と、新たに法務大臣がつくる戸籍情報連携システム(仮称)による情報連携を実現する。戸籍への付番は、戸籍の附票に生年月日・性別・住民票コードを追記し、新たに附票ネットワーク(仮称)を構築して行うという。私たちは、データ主体として、以下の理由から戸籍法改悪法案に反対する。

1.国による全国の戸籍・除籍データの一元管理

 これまで戸籍・除籍の正本は戸籍事務を管掌する市区町村が保存し、副本は各地の法務局が保存していたが、改悪法案では法務大臣が副本を保存することになる。
 住基ネット最高裁判決は「取り扱われる個人情報を一元的に管理することができる機関又は主体は存在しないこと」を住基ネット合憲性の一要件とした。改悪法案は、まさに番号をキーとして国(法務省民事局)が全国の戸籍・除籍副本データを一元的に管理する体制を構築するものである。

2.戸籍制度が抱える目的規定の欠落・差別データ蓄積などの問題を固定化

 戸籍法には検討された目的規定が設けられなかった。根幹となる目的規定がないので目的外利用の禁止や目的達成可能な保存期間を超過しないことも規定されない。除籍の保存期間は法務省令で150年に延長された。住民票や戸籍の附票の除票まで保存期間を5年から150年に延長する政令改悪が準備され、これにお墨付きを与える意見書が地方議会で可決されている。
 親族的身分関係情報を収集・記録する戸籍には、アイヌ、被差別部落、婚外子、棄児、療養所・刑務所での出生などの差別データが蓄積されてきた。住民票・戸籍の附票に記録される住所と方書からも、施設や刑務所での出生・入退所・死亡の事実などが読み取れる。
 1990年12月14日、国連総会は「改訂版電算化された個人データファイルの規制のための指針(E/CN.4/1990/72)」を採択し、各国に法制化を求めた。指針が定める目的明確化の原則や非差別の原則は、EU のGDPR(総合データ保護規則)にも明記される国際的なプライバシー保護基準である。生涯に亘る身分関係・居住関係の悉皆記録は、忘れ去られる権利をも侵害する。 データ主体の権利やプライバシー保護の実現に背を向け、旧態依然たる戸籍データをネットワーク化することは、戸籍制度が抱える問題を固定化し、その解決を困難にするものである。

3.相続には使えない戸籍事務への番号制度導入

 戸籍事務への番号制度導入では、戸籍情報連携システム(仮称)と附票ネットワーク(仮称)という全国ネットワークを新たに二つも構築するという。各種届出に戸籍謄抄本の添付を省略できることが「利便性」だというが、電算化戸籍しか扱えないため、もっとも利用の多い相続手続きには当面使えない。これでは費用対効果は全く望めない。

4.変質する戸籍法・番号法・住民基本台帳法・個人情報保護法の疑問を解明せよ

 滅失した戸籍の再製に使われてきた戸籍・除籍副本データは、法務省と市区町村間の情報連携に利用され、その性格が大きく変質する。番号制度において、マイナンバーではなく情報提供用個人識別符号と紐づけられる個人データが情報連携されるのは、戸籍が初めてだ。住民基本台帳法は、自治体の自治事務である住民基本台帳事務を定める法律だが、法案は、本籍地の市区町村長が戸籍の附票の記載事項を地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に提供する法定受託事務を初めて盛り込んだ。個人情報を「生存する個人に関する情報」と定める日本の個人情報保護法制下で、死者の情報が生存する子孫のプロファイリングに悪用されないか。
 改悪法案には「政省令で定めるところにより」の文言が並ぶばかりで、制度の全体像も詳細も闇の中だ。制度の根幹にかかわる変更を解明しないまま、拙速な制度導入は認められない。
2019年4月12日
共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会(共通番号いらないネット)

Note
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