マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2025.11.12 #401
厚生労働省ヒアリング 保険証利用終了 マイナ保険証のトラブル 資格確認書 オンライン資格確認 プライバシー保護

厚生労働省ヒアリング回答(2)
医療情報集中管理 患者の権利は?!
オンライン資格確認のプライバシー保護等について

【2025.10.30厚労省ヒアリング回答(2)】 第2回は、オンライン資格確認等システムにおけるプライバシー保護等についてです。マイナ保険証の利用率が3割台に低迷する原因にはプライバシー侵害への不安があることを指摘し、医療機関への情報提供の同意画面の改悪や、集中管理される医療情報等へのサイバー攻撃や利活用に対する患者の権利などを質したやりとりをまとめて報告します。
●もくじ » 回答(1) » 回答(2) » 回答(3)
政府が健康保険証の利用を2025年12月1日に終了しようとしていることに対して、10月30日福島みずほ参議院議員事務所を通じて厚労省にヒアリングを行いました(当日はこども家庭庁とデジタル庁の担当者も出席、回答1)。ヒアリングにおける回答と質疑の内容を、3回に分けて報告します。
●厚労省に事前提出したヒアリング事項2 » 全文をダウンロード
●凡例:本文中の【⇒p.(数字)】:対応する » 「厚労省ヒアリング・院内集会資料」3 のページを示します。

  

 厚労省は医療情報の漏えいや、医療機関で病歴・通院歴などを閲覧されたくないなどプライバシーへの不安のために、マイナ保険証の利用をためらう患者がいることは認識しています。しかし、健康保険証の利用が終了すればマイナ保険証の利用が増えるという説明で、患者の不安を受け止めようとしていません。閲覧に「同意しない」ことがわかりにくくなったカードリーダーの画面についても、改善する姿勢はありませんでした。
 また国会提出中の医療法改悪では患者の同意不要でカルテ情報を支払基金で集中管理することや、自治体の健診情報も集中管理するPMH(Public Medical Hub) などについて説明がされました。
●「ヒアリング事項」参照: » 「ヒアリング事項」を開く
[2]オンライン資格確認等システムにおけるプライバシー保護等について

[2]オンライン資格確認等システムにおけるプライバシー保護等について

(1)医療情報等の閲覧について

 ヒアリング事項 
 厚労省は健康保険証を廃止する必要性を、医療情報等の閲覧によるより良い医療の提供というメリットを早期に実現するため、と説明している。しかし2024年8月30日の社会保障審議会医療保険部会資料を見ても、マイナ保険証を使いたくない理由として医療情報等の閲覧や一元管理への不安をあげている人が少なくない【⇒p.3】。
 この不安が解決されないことが、利用率低迷の一因になっているのではないか。
 厚生労働省の回答 
 マイナ保険証を進めるメリットの一つが、医療情報の閲覧によってデータに基づくより良い医療につながるというところがあり、そのメリットを発現させるために健康保険証からの切り替えを促すと従来から説明している。
 昨年の8月の医療保険部会の資料の中で実施したアンケートで、国民の皆さんの不安の声も利用が進まない要因の一つだというところはあるかなと思っているが、直近のデータとして先日の医療保険部会の中で出した各保険制度別の利用率は、7月に有効期限を迎えた国保の利用率がかなり大きく伸びているおり4、これから12月に向けて健康保険証の経過措置の終了を迎えるので、より多くの方々にマイナ保険証を使っていただけるようになるのではないかと受け止めている。
 <質疑及びコメント> 
 多くの人が厚労省のマイナ保険証のアンケートに、医療情報がまとまって管理されることや過去の投薬・健診・治療などの情報が医療機関に閲覧されることへの不安を回答しています。
 しかし厚労省の説明は、これらの不安を受け止め改善をはかるのではなく、健康保険証を廃止すればマイナ保険証の利用が増えるのだから、という姿勢でした。

(2)閲覧できる医療情報について

 ヒアリング事項 
 現在閲覧可能なのはレセプト記載の病名・治療内容であり、1~2か月前の、かつ診療報酬請求のための情報となっている。今年3月を全国導入目標にしていた電子処方箋の普及率は3割程度で目標が2030年に延期され、電子カルテも2030年には導入を目ざすとされている(2025年7月1日第7回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム 資料2 ) 5【⇒p.3】。
 2030年までは、直近の情報が閲覧できないのではないか。
 厚生労働省の回答 
 指摘のとおり、今オンライン資格確認の中で確認できる情報は、レセプトに由来する薬剤情報や医療情報で、診療報酬の請求があった後にデータが反映される。
 電子処方箋の導入が進むと薬剤情報は、よりリアルタイムに医療機関、薬局で確認ができるようになる。全体としては電子処方箋の利用率は3割4割に届いていないが、薬局では8割を超えていて紙の処方箋の情報も含めて薬剤情報を入力いただいており、薬局を基盤としてリアルタイムでの薬剤情報を活用閲覧ができる。目標の2030年に達しないと直近の情報が閲覧ができないということではなく、なるべくリアルタイムで電子カルテの情報も含めて閲覧ができる環境を整備をしていきたい。
 <質疑及びコメント> 
 「データに基づくより良い医療」といっても、直近の診療データが閲覧できるのは電子処方箋や電子カルテのデータがマイナ保険証のシステム(オンライン資格確認等システム)に接続された後です。医療機関では電子処方箋が1割程度しか普及しておらず、厚労省は2030年が導入目標の電子カルテと一体で導入を進める方針で、普及計画を来年夏ごろまでに策定する予定です。
 健康保険証の廃止を先行しても、「データに基づくより良い医療」を早期に実現することにはなりません。厚労省はマイナ保険証の計画を見直し健康保険証の利用を継続すべきですが、その姿勢は示されませんでした。

(3)医療情報等の閲覧の本人同意画面の変更について

 ヒアリング事項 
 昨年9月のヒアリングでは、閲覧はその都度本人同意をいただいていると説明された。しかしその後同意確認画面が変更され、初期画面では「全て同意する」「個別に同意する」の選択となり、「同意しない」は「個別に同意する」を経ないと選べなくなった【⇒p.4】。
 これでは初見では「同意しない」ことができると理解できず、本人同意を得ているとの説明に反するのではないか。
 厚生労働省の回答 
 これまで薬剤情報、医療情報、特定健診の情報を個別に同意する画面設定をしていたが、マイナ保険証の利用者が増え選択する手間を考え同意画面を簡素化し、包括的な同意を可能とするような仕組みにしている。
 その「個別の同意」の中で同意しないことを選んでいただくこともでき、必ずしも本人同意を得ていないということにはならない。
 <質疑及びコメント> 
 医療・健診情報は個人情報保護法で要配慮個人情報とされており、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないように取扱いに特に配慮が求められ、原則として本人が希望した場合だけ提供が認められます。選択する手間を考え同意画面を簡素化しようと考えること自体、プライバシー軽視です。厚労省は2025年2月にも同意画面を改悪して、「同意しない」画面にさらにたどりつきにくくしました。
 画面をつくった厚労省はわかっていても、患者は「同意しない」ことはできないと思ってしまいます。厚労省は、わからなければ医療機関の窓口で聞いてもらえばいい、と説明していますが、そもそも「同意しない」画面があることを知らなければ聞くこともできず、医療機関窓口の説明の手間も増やして簡素化に逆行しています。
 閲覧に同意しないことを、できるだけ減らしたかったのではないかと思わざるを得ません。

(4)限度額適用認定証情報の提供同意画面の省略について

 ヒアリング事項 
 閲覧画面の変更により、高額療養費の限度額を医療機関等が閲覧することに本人同意が不要になり、閲覧に同意しないことができなくなった【⇒p.4】。限度額情報は世帯の所得状況を反映しており、国会で政府は限度額情報も個人情報と認めている。
 高額療養費制度の適用が不要な受診で、家計の状況をかかりつけ医に伝える必要はなく、「提供する」を選択した場合だけ閲覧可能にすべきではないか。
 厚生労働省の回答 
 当初は指摘のように限度額適用認定証情報も提供に当たっての同意を念のため取得していたが、医療機関側の要望として緊急時にそういう同意を求めるのは難しい、あるいは最後にこの画面の同意をすることにカードリーダーの操作が終わったのか終わっていないのかわかりづらいという意見を頂戴していた。
 限度額適用認定証情報の提供は、医療機関が請求するために必要な資格情報と同様の位置づけであり、個人情報ではあるけれども資格情報も同じく個人情報であり、法令上の規定に基づいて医療機関が取得をするので、必ずしも同意がなくても取得ができる情報として同意を省略した。
 <質疑及びコメント> 
 高額療養費の限度額は収入によりランク分けされ、限度額認定証情報で世帯の大まかに家計状態がわかるため、みだりに開示するのはプライバシー侵害です。
 高額療養費制度を利用するのは入院・手術や高額な投薬治療の場合で、一般的なかかりつけ医への定期通院や風邪などでの受診では必要ありません。
 カードリーダーの操作が難しいのであれば、限度額情報が必要な場合だけ提供に同意する画面を案内して、それ以外では提供しないようにする方が合理的ですが、厚労省は全ての患者が同意なく医療機関に提供するように変えました。
 ただこれはマイナ保険証を使った場合だけで、資格確認書で受診する場合は医療機関の閲覧には個別の同意を必要にしていると、厚労省は説明しています。収入状況をみだりに医療機関に伝えたくなければ、資格確認書を使うようにしましょう。

(5)PMH (Public Medical Hub) について

 ヒアリング事項 
 自治体のもつ情報をオンライン資格確認等システムにつなげるPMH(Public Medical Hub) は、来年度から全国展開を予定しているが、自治体に利用を義務付けるのか。義務づける場合、医療費助成の情報だけか、母子保健など健診情報の提供も義務づけるのか【⇒p.4】。
 厚生労働省の回答 
 医療費助成分野でオンライン資格確認を行うためのPMHの利用については、令和8年度中の全国規模での導入を目指すのが政府方針となっており、また法的整備も行っていくので、それに基づいて基本的には令和8年度中にご対応いただきたい。
 こども家庭庁の回答 
 母子保健領域についてPMHを活用した妊産婦健診・乳幼児健診は、令和8年度以降全国展開を行うにあたり環境が整った自治体より開始いただくことを想定している。
 加入自治体においては、検診会場や医療機関において、マイナンバーカードを用いて受診した利用者の検診情報がPMHを介して本人や自治体に連携されるという形になっている。
 厚生労働省の回答 
 予防接種については、令和8年度6月から、オンライン資格確認を導入することとしているが、各自治体におけるシステム改修も伴うので、準備の整った自治体から順次導入していただく。
 <質疑及びコメント> 
 質疑応答のなかで、以下の説明が補足されました。

 「医療費助成は2種類あるが、公費負担医療という法律によるものはマイナンバーの利用事務になっており、基本的に令和8年中には対応いただきたい。主にこども医療費などの地方単独の医療費助成制度は、自治体の条例で行っているのでPMHの利用は任意だが、メリットを見据えて導入していただきたい。

 「母子保健の情報は、令和8年度以降環境がととのった自治体から参加いただく。予防接種の情報も、令和8年6月以降、準備が整った自治体から導入いただく。予防接種も母子保健も、法令上マイナンバーの利用事務になっている。

 この「環境が整った」については、自治体のシステム改修など参加のプロセスが整ったら、という説明です。法律上、参加は義務ではないと理解していいか確認したところ、法令上は「電子資格確認ができる」という規定になっており、参加しなくても違法ではないということでした。

(6)医療情報等の連携について

 ヒアリング事項 
 国会提案中の医療法改正案では、オンライン資格確認等システムを基盤に、医療機関から電子カルテ情報(3文書6情報)の社会保険診療報酬支払基金への提供を義務付け共有することが示されている【⇒p.5】。
 医療機関による閲覧には本人同意を要するとされているが、そもそも提供を義務づけることは医師の守秘義務や要配慮個人情報の保護に反しないか。
 医療機関に対する不正アクセスの危険性は連携が強まればますます高まっていくと思われ、支払基金への電子カルテ情報等の提供義務化は問題ではないか。  
 厚生労働省の回答 
 法案は、医療機関から電子カルテ情報の社会保険診療報酬支払基金への提供を義務付けるものではなく、医療機関から支払基金への情報登録を可能にするもの。患者は他の医療機関に行った際に顔認証付きカードリーダーで情報の提供に同意か不同意かを選択できることを前提として、医療機関から支払基金の情報登録を可能にするもの。そういった形で要配慮個人情報に配慮している。
 一般的には医師の守秘義務は、患者やその家族以外にみだりに開示しないようにする話と認識している。本法案では医療機関から支払基金への情報登録は法令上のものとして可能にするということであり、閲覧は顔認証付きカードリーダーでの同意不同意を前提としており、必ずしもみだりに開示するとかそういったことではない。
 医療機関のサイバーセキュリティに関して、医療情報安全ガイドラインを出してサイバーセキュリティへの対応を促してきた。加えて2023年4月には医療法の施行規則を改正し、そういった対応を省令事項とした上で、サイバーセキュリティへの対策として分かりやすいチェックリストを配布したりだとか、他省庁と連携した上で医療機関ができるサイバーセキュリティ上の対応のサービスや補助金の案内などもしており、医療機関のサイバーセキュリティの対策に努めている。
 <質疑及びコメント> 
 国会審議中の医療法改正案について、医療機関から支払基金への電子カルテ情報の提供は「できる規定」であり、「できる規定」は義務ではないということであれば医療機関の義務ではなく、医療機関の意思で提供する形になると説明されました。
 一方、提供に患者の同意は不要となっていることには、とくに研究などへの医療情報の二次利用は「世界医師会ヘルシンキ宣言」第25項6 でインフォームド・コンセントが必要で、医学研究への参加は自発的でなければならならず、本人の自由意思によって同意しない限り研究に参加登録することはできないとされていることをふまえていないと質しました。
 厚労省はこの点について、法案の元となる二次利用の検討会で議論されて法案の形になっている、と説明しています。しかし検討会が医療情報を利活用したい人たち主導で検討され、利用される患者側の不安が反映されていないのではないかと指摘されています。
 これらの点は、国会で慎重に法案を審議することが望まれます。

(7)社会保険診療報酬支払基金での個人情報保護について

 ヒアリング事項 
 マイナ保険証(オンライン資格確認等システム)を運用する支払基金は、今後医療DXに係るシステムの開発・運用主体となり、医療・健康・介護などの個人情報を集中一元管理することが予定されている【⇒p.5】。
 要配慮個人情報である医療情報等の個人情報保護について、どのような取扱規定を整備しているか。
 厚生労働省の回答 
 現時点でオンライン資格確認の中で共有する要配慮個人情報について、支払基金ではレセプトの情報の管理・分析の規定を設けるとともに、個人情報保護ではそれ以外の情報も含めて職員が漏洩した場合の罰則なども取扱規程としてもうけている。また国の行政機関等が従うべきサイバーセキュリティ対策の基準等に準拠して情報漏洩の防止を取り扱っている。
 <質疑及びコメント> 
 今後、民間法人である社会保険診療報酬支払基金が医療DXの中心組織となり、医療・健診・介護などの情報を一元的に管理することが予定されています。また医療機関は支払基金と常時ネットワーク接続されます。ランサムウェアなどの被害が多発する中で、このような仕組みを作って大丈夫なのか、質しました。
 厚労省の、医療機関には法令上サイバーセキュリティ対策が努力義務になっておりチェックリストの配布など対策するとの説明に対して、医療機関からは随分重たい荷物を背負わされるとの感想がだされました。
 また支払基金について、セキュリティ対策や漏えいへの罰則等の取扱規定など医療情報の安全管理の措置は講じているという説明だけで、情報を提供させられる私たちの自己情報コントロール権がどう保障されているのかは、説明がありませんでした。

Note

○本報告の他のページへのリンク
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*1 厚労省ヒアリングに出席した各省庁・部署は以下のとおりです。
  【厚生労働省】
   保険局医療介護連携政策課保険データ企画室
   保険局保険課企画法令第一係
   大臣官房情報化担当参事官室
   健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課
   医政局参事官付医療情報室
   医政局医療情報担当参事官室
   保険局保険課支払基金業務調整係
   保険局国民健康保険課
   保険局保険課指導調整係
  【こども家庭庁】
   成育局母子保健課
  【デジタル庁】
   デジタル社会共通機能グループ
   国民向けサービスグループ

*2 厚労省に事前提出したヒアリング事項 » 「厚生労働省ヒアリング事項」

*3 » 「厚労省ヒアリング・院内集会資料」 (当日配布資料 pdfファイル)

*4 » 第200回社会保障審議会医療保険部会(2025年10月16日) 資料2 p.4。国保保険証の有効期限が7月までの市区町村で、8月のマイナ保険証の利用率が10%増加したが、それでも利用率は46.8%で半数に満たない。

*5 出典:厚生労働省 » 第7回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料について にある「資料一覧」の「【資料2】電子処方箋・電子カルテの目標設定等について」(PDFファイルをダウンロード)。 2025年7月1日。

*6 » 「世界医師会ヘルシンキ宣言 人間の参加者を含む医学研究のための倫理的原則」(2024年改訂) 樋口範雄監訳・日本医師会訳、「自由意思に基づくインフォームド・コンセント」第25項。

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